第 31 卦 · 沢山咸
咸 · Xián
彖辞
咸は亨る、貞しきに利ろし。女を取れば吉。——心と心が感じ合うことで通じます。正しさを保てば実り、縁組にも良い時です。若い男女が自然に惹かれ合うような、素直な共鳴を示す卦です。
象辞
山上に沢有るは咸なり。君子以て虚しくして人を受く。——山の上に沢が水をたたえる形が咸です。君子はこれに学び、心を空にして人を受け入れます。
解説
咸は感応の卦です。理屈より先に心が動き、言葉にする前に伝わる。そんな関係や場面が主題になります。この卦が良い形で働くための条件はただ一つ、心を空にしておくことです。先入観や下心で満たされた心には、何も入ってきません。相手の言葉を評価せずに聞き、自分の考えを一度脇に置いてみてください。それだけで、驚くほど通じ合えるようになります。一方でこの卦は、感応の危うさも示しています。爻は足の指から始まり、ふくらはぎ、太もも、そして口へと上がっていきます。動きやすい部分だけで反応すると軽薄になり、口先だけの共感で終わるということです。焦らず、静かに響き合うのを待ってください。
恋愛
最も縁の生まれやすい卦です。自然な好意が通じ合います。駆け引きを捨て、心を開いて接してください。急いで形を求めず、響き合う時間を大切にしましょう。
仕事
人との相性が成果を左右します。相手の話を先入観なく聞くことで信頼が生まれます。理屈で押すより、共感を土台にした提案のほうが通りやすい時期だと言えます。
アドバイス
心を空にして、相手の言葉をそのまま受け取ってください。
爻辞
初六、其の拇に咸ず。——足の親指がわずかに動く程度の感応です。気持ちは芽生えていますが、まだ表に出す段階ではありません。静かに温めてください。
六二、其の腓に咸ず、凶。居れば吉。——ふくらはぎが動きます。反射的に動き出したい衝動です。そのまま従えば凶、留まっていれば吉となります。
九三、其の股に咸ず。其の随うところを執る。往けば吝。——太ももが動きます。人に引きずられて動く形です。自分の意志を確かめないまま進めば、後悔が残ります。
九四、貞にして吉、悔亡ぶ。憧憧として往来すれば、朋 爾の思いに従う。——心が定まれば吉です。あれこれ思い迷って行き来するうちは、限られた人しか応じてくれません。
九五、其の脢に咸ず、悔なし。——背中で感じます。表情に出ない、動じない感応です。派手さはありませんが、悔いの残らない落ち着いた在り方です。
上六、其の輔頬舌に咸ず。——頬と舌だけで感じます。口先の共感です。言葉は達者でも心が伴わなければ、相手には見抜かれてしまいます。